ゲンゴローは太郎の言葉に少し勇気づけられた。気を取り直してソファに座りなおした。二―二が飲みものをもってきてくれた。「お! 気が付くね~」と、太郎からの”励まし”の手荒い応対をもう忘れたかのように、記者としてのプロの目に戻った。一呼吸ついたところで、太郎が、「ゲンちゃん!どっち追いかけてんの?」「????」。太郎が「ふ~ん。。。」とゲンゴローの戸惑いをみてとって、「だから、どっちの捜査の進展がないといっているの?」。ゲンゴローはしぶしぶ「ネタ的には”ゾッド社長の殺人事件”だし、、、もうひとつは中途半端感の”子猫らの失踪”は、て~と、なぜかその後、”尋ね人”もほとんどなくなってしまってよ~。ま、今はゾッド社長殺しだな~」と。太郎もうなずいて、「ま、ゲンちゃんの強みは、独自に取材し、ときには真相に近づくわよね?」「そうだよ。それが行き詰っているっつ~の。」すこしふてくされたゲンゴローを見て、「どうだろう?2つの事件の関連性は?」「え! そりゃまた?。。。太郎さんの勘?。。。かえ?」。
太郎は両方の事件の真相をほぼ知るから、どうおさめようか苦心していた。両方とも舞台は同じゾッドカンパニー社。子猫らの失踪のほうは現場を押さえ”失踪した子猫”らの救出を秘密裡で行った。影軍団の存在は影のままだ。一方、世間の目は、ゾッド社長殺害事件にあるから、Catタイムス社でも世間の関心に力をいれるのは当然である。しかしこちらは捜査の進展を待たねばならない。ゾッド社長殺害犯は二―二やチロ隊長が”仕留めた”ヒョウ柄3”兄弟妹”(きょうだい)に間違いがないであろう。くすねてきたであろう大金は太郎がちゃっかり”預かっている”。というのもこれだけの大金を公にするには影軍団の存在を疑わさせる危険もともなうから、これだけは”絶対”避けたい。できれば、この大金そのものがなかったことになればよいのだ。太郎も捜査の進展具合が気になるが一向に進んでいないようだ。
太郎は、「捜査陣の最近の動きは?」「そりゃま、俺だって連日警察署につめて、警察の動きはちっとヮ掴(つか)んでいるよ!。。それである時、記事原稿を書いたんだけど、デスクから止められちゃってね。。。。。”この場合は憶測で書いちゃいかん!”と言うのさ。俺もそれくらいわかるワさ。なんせ相手は大物中の大物。上越選出の国会議員、”XX”党の金庫番とも言われる厚生省の”一郎”事務次官だもんな」。太郎は「で、どうしたの?その何某(なにがし)議員」「ゾッド社長が一郎先生に多額の献金をしている形跡があったようなんだけれど、事件の担当警部がさ、目くばせ”言ってくれた”のさ。”事情を聞くだけだ、追いかけてきたら。。。。と言っていたようなのさ。それでおいらも追いかけてそれでがその先生が事情聴取を受けたとわかったのさ。。。しかしね、その後 その警部も一切だんまりでね。」太郎は考え込みながら、「ふ~ん。そのほかに変わったことは?なんでもいいわ」ゲンゴローは考え込んで「う~ん。。。 そういえば、殺害事件のあと陣頭指揮をとるべき警察署署長が異動になったね。。。陣頭指揮をとると思われた警察署署長がね~。。。 異動には早すぎるし突然だもんな。な~んも発表もないし。ま、個人的事情とやらと噂されて、それっきりで、それと あ~直江津税関所長もそれから1日置いてね、異動になったし。。。。。」しばらく考え込んでいたゲンゴローは大きな声で「あッ!」。と。ロビーにいた客らも、接客していた二―二もゲンゴローのほうを向いて”何事か?”といぶかった。太郎も「おかしいわね。。。」とゲンゴロウにウィンクしてみせた。ゲンゴローはすぐに立ち上がり、「すまない、用事思い出した。失礼するよ!」とよれよれのコートをもって立ち去ろうとした。太郎はせわしなく立ち上がったゲンゴローに「ゲンちゃん。あたしからの情報もあるから。。。」と言う間に、ゲンゴローはもう玄関に向かっていた。太郎は、「は~ッ あいかわらずだわね。」。二―二もあわてて席を立ったゲンゴローをみて太郎のところにきて「おじさん、なんか元気いっぱいになっちゃって。。。」、と。しかし太郎は「また来るはずよ!」。
太郎は二―二に向かって「相談あるの」
太郎は二―二に 雪之丞から伝えられたことを話した。それは、雪之丞一座が、やしろホテルの広場で、1日限りの公演をしたいというものであった。時期は10月のおわりから11月のはじめ。あと3週間もないのだ。二―二の出演も切に望まれているということも伝えた。
二―二は 最初戸惑っていたが、「太郎さん、あたしそんな人に見せれるほどの特技はないんだけど~」と。太郎は、「自分では気がつかないこともあるのよ。ま、二―二は二―二のままでいいからね。”振り付けとおりに”といっても無理だから。あたしが一番知っているから!」。もう母がさとすような口ぶりである。「そう、そうだよね。。。。。。」とようやく得心したのか 二―二が続けた「わかった。」と。
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