(46)ゾッド社長 殺害の捜査はじまる。

「へ~、~フェクション!」。ゲンゴローが雪之丞の手裏剣投げ曲芸の的(まと)になっていたことを後で知った。知ってから、ガタガタ震えが止まらなくなって大きなくしゃみをした。本人はなにか夢うつつで催眠状態にあったから恐怖心などなかったのだが、残念ながらまったく記憶がない。だから迫力ある記事がかけないことを悔やんだ。あの大スター 雪之丞と同じステージにたったのだ。同僚のカメラマンから、ナイスショットを見せられてからなおさらだ。「すごい!まったく動じてないもんね。。。。怖くなかった?」と聞かれても「ま~ね!」とあいまいに答える始末で、このままでは記事はTV録画をみて~ということだ。だから他紙と同じで”平凡な記事かも~。”と、ゲンゴローはそう思うとすっかり落ち込んだ。

オーデションも終わって、審査が始まった。審査結果は開催会社のゾッド社長から発表ということで、担当部長がゾッド社長を呼びに社長室に訪れた。社長室のドアは開きっぱなしで、真っ暗であることで、”あれ~?不在か?トイレかな~”。いつも黙って社長室に入ることを許されていないから、少しドアの前で待つことにした。審査発表の時間がしだいにせまってきて、”弱ったな~もう待てない”として、社長室の入り口の電気のスイッチを入れ、ドア越しにのぞいてみた。すぐに異変に気が付いた。金庫が開けっ放しで、ちょうど金庫の扉に寄りかかるようにしている社長の姿を見たのだ。不健康であるということは、空咳の連続を常に近くで見ていたから、”まさか?!””「もしや?!”と思い、すぐに駆け寄って、「ワッ!」と大声を出した。

ゲンゴローは会場のアナウンスがもう3度も同じことを繰り返していることに気が付いた。「審査に手間取っています。」「もう少しお待ちください」と。会場のみんなも”もう夜が明けようっていうのにな~”とざわつきはじめた。

そのころ連絡を受けた警察がすでに到着していて、会場の封鎖がされ、人、車の出入りが禁止された。到着した刑事から首を絞められた痕跡があり、金庫もあけられていたころから、他殺と断定されたからだ。

アナウンスが再びあり、警察担当者から話があります。と。会場は大騒ぎになった。「え~ 社長が殺された?」「調べがすむまで会場から出れないだとよ!」とまちまちに声があがった。TV中継も急きょ特番を組み、同行のレポーターが朝のTOPニュースとして情報集めに余念がない。オーデションの担当部長から「申し訳ありません。警察のご指導もありましてこのたびの審査結果は後日改めて応募者に通知させていただきます。朝食、飲み物はご自由にご利用ください」とあらためてあった。

影軍団のチロと大輔とチビクロは大きな小さな車輪のついたアルミケース2個を引っ張ってすでに帰ってしまっていた。太郎と二―二は会場に戻って、この騒ぎを聞くやいなや「太郎さん。もしかしたらヒョウ柄のしわざ?」「。。。。」

そのかわり「お腹すいたわね~ なにか食べましょう」。事務所のなかのロビーにむかった。

そのころイベント担当部長ほか会社の主だった幹部が社長室に集められ、現場を仕切る警部に事情を聞かれていた。警部の質問は 「ここ最近、社長のまわりにトラブルは?」とか「金庫の中身は?現金はあったのか?」とかが中心であったが、口々に、「まったくのワンマンで、社長室に入る時も、秘書の許可がなければ。。。」「個人金庫のことなんて我々は”そこにあった”ということしか知りませんね~。会社の金庫は別にあるので用がないもので。。。」「。。。。」しばらくして、経理担当部長が「そうだ 秘書らに聞いてみてくださいよ!彼らは、我々のとりつぎ役だったから、それと、警護も担当していたから、常に一緒のはずですよ!。。。どこに行ったかね? ッたく 肝心な時に!」と吐き捨てた。警部は秘書らがこの幹部らに良い目で見られていなかったことを感じて、「秘書らというのは?」「どんなって言われても、ヒョウ柄で目が細く、睨まれると”ゾクッ!”として」。。。。「ブルブル」と両手を自分の胸にかかえて震えるしぐさをした。そして「3兄妹ですよ。名前はピンさんとポンさん。この2匹が兄弟で兄がピンさんですよ。そのほかに新設の人材派遣部の部長、といっても一人っきりの担当兼部長ですが、その末妹がいますよ。名前はパンさん。おなじヒョウ柄で。。。。最近交通事故で片手を失っていましてね。さっき会場でみかけましたよ!」と。 すぐに警部は「おい!。すぐにこの3兄妹を探せ!」と傍にいた捜査員に命じ、何匹かがすぐに現場から立ち去った。

太郎と二―二は異様な雰囲気の中のロビーに入り、簡単な食べ物と水を受け取り雪之丞一座のいる”粗末”な楽屋に出向いた。雪之丞はステージ衣装を脱いで、やはり軽食をとっていた。

太郎から「お疲れさまでした」と、さも雪之丞の演技を見ていたかのようにねぎらった。二―二は、あてがわれた粗末な楽屋を”きょろきょろ”とながめている。雪之丞に正体を知られてはこまるのだが、雪之丞は二―二に短剣をプレゼントしたことからも、うすうすというか?すでに太郎と二―二 そしてその仲間らの正体に気がついていて、ま~ここは ”阿吽の呼吸”ということか。

雪之丞は、「どうでした?」。太郎は「え~そっちは解決しましたわ。だからこっちのスタッフはもう帰ってしいましたわ。。。。。でもゾッド社長がね~ これはどう考えたら。。。。」 雪之丞から、「今さっき警察のかたがきてヒョウ柄の3兄妹知らないか?聞いていきましたよ。。。」と、太郎の顔を意味深に覗いた。太郎は観念したかのように、「え~、例の件に大きくかかわっていましてね、、、」と。しばらく太郎の顔を見つめていた雪之丞は、「。。。。わかりました。」と。雪之丞のスタッフはなにがなんだかわけがわからず ただ作り笑いをして戸惑っているようすだ。            次回

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